2015/1/16
二〇一四道釣記その壱
(ロングバージョン)


社員A「えーっと、これは要るな。あと、これも効きそうやな。」
自分「ちょ、ちょっとそれは多いんじゃ・・・」
社員A「せっかくやからな〜。」

ケースにポイポイとルアーを入れて行く社員A氏を見ながら焦る自分。

「ルアー貸すから取りに来て。」
と言われて準備の進まぬ 出発直前、
sumluresを訪れた自分に託された小型ボックス一杯の精鋭達。

更にもうひと回り小さなボックスが手渡され、
社員A「それと・・・、これは根掛かりしない様な、
地形把握してるとこで使って。絶対に無くさんといてな〜。」

その中には、初めてsumluresを訪れた時、
膨大な数のルアーが山積みにされた大机の端に見つけて
瞬時に (コレとコレは絶対に行ける・・・)
と思っていた2本も入っていた。

加えて「使えるとこあったらコレ使って」 ・・・と、Light Trip G52。
以前、ガイド補修を申し出て預かった時にテストをしないと心配という理由で
60〜80クラスの魚多数を自在に操った、
“昨今のマテリアルや製法 云々なんだそりゃ”
の正しく自分の腕の延長ロッド。 
しかしこのロッドは使用歴があるのでテストしなくてもいい。
出番はあそこだな。いや、あの辺りも行けるか。
楽しみが増えたな〜。

急ぎ家に戻り、玄関前に着けた車の後部へどんどん荷物を放り込んで行く。
結局いつも通りギリギリ迄掛かってようやく家を出る。
準備した物は

・書き込みがかなり増えた5万分の1地形図10枚
・歯型でボロボロの精鋭達
・まだ傷も無いSUMLURE軍団
・ロッドとリール
・擦り切れ気味のオイルドジャケット
・頑強一点のシューズ
・そろそろ限界のウェーダー
・その他諸々がお供。
携帯・GPS・事前情報一切ナシ。

己の直感を信じるのだ。

翌朝から船内で準備を始め、自分の主力ルアーに一通り目を通した後は、
ベッドスペースにsumlure達を並べてじーっと見ながらしばし考える。
下船迄の時間とフックのスレッド巻き&交換に掛かる時間を照らし合わせると、
全てのフックを作製するのは到底無理。
よし、5本程度に絞って、ある程度のウェイト調整もしてしまおう。

深底タッパーに水を汲んで来て、
トレブル装着時のルアー自重を1/10g単位 で計測して
フック作製後に再測定と水に入れて姿勢調整。
数本完成。
あとはポイントでその時の流速・水量 に合わせて調整。
残りの時間は仮眠の暇も無く、ひたすらフック単体の増産。

下船の少し前に船内のBS放送で、
あの魚の特集をしていたのでスレッド巻きながらしばらく鑑賞。
以前に見た事がある映像だったのと、
「モンスターはあんなもんじゃないんだよ・・・」

9月23日

自宅を出て凡そ32時間後のam5:30到着(下船後走行290km)。
やや明るくなり始めている。
気温14℃。
橋の上から川を見ると、水の色が気になる。
水量そこそこなのに、少しおかしな濁り方。

気温とこの時期の傾向からして雨が少し 降っていた気配はあるけれど、
支流と本流の水の色が この場合の色と少々違う。
特に本流がおかしい。
少し時間が経てば理由も分かるだろうと、
ひとまず車を駐車スペース迄降ろしてルアー調整と川の健康状態をチェック。
ふむ、ふむ、と、この川でのsumlure達の動きを順に見て行って、
コイル状ウェイト、生分解性粘着性タングステンにて再調整。

さて、最後に自分が目を付けた2本。
まずは細くてペランとした奴(SABEL SUM)。
あ、 むぅ、こ、この、やっぱりこの川だとこのルアー、
ニーリングして無理矢理水中ダイブさせても
バイトを誘発する動きが一度のキャストで一回出来るかどうか。
不細工でもいいからとりあえず
流速・水量 を上手く使って自在に操れる様に
追加ウェイトの場所や比率を換えながらしばらく後、
なんとか行けそう、かな?。
後で違うタイプのポイント数カ所で更に調整してから測定して基本設定としよう。
ルアーチェンジしつつ流れの上手側に少しづつ移動していたが、
ここ、今は濁りで底見えないけど、
たしか押しが弱い時は腰迄入って渡れる平瀬だよな、
よし、ややずんぐり体型の君(F-90)、行きなさい。
流速あるのでアップ気味にキャスト。
魚を出すつもりなので遠投せずにここだな、
と対岸迄2/3、およそ25mに着水。
あぁ、少し暴れる・・・。
この流れではちょっと動き過ぎてしまう。
即ピックアップか、行ってしまうか。
仕方ない、 強制鋭角ライン変更+水面へ向かって高速ヒラ打ち。
少しレンジが上過ぎたか・・・
50クラスが大口を開けての反転バイトを視認。
やはり動きは鋭いままにもう少しこの川でのコントロールをし易くしないと。
しかし掛からなかったものの、
今迄全く釣れた事がないこの場所で魚を出せたのはかなり大きい。

am7:00
パン1枚とコーヒーで軽く食事の後、
300m移動して岩盤・大岩等が点在する地点へ。
ここでも実釣しつつ、自分のレギュラールアー、sumluresのリセッティング をする。
自分の考えと経験ではここで釣るなら対岸から攻める
(と言っても川幅が広いので川 の中央流芯部)方が魚は出るけれども、
今は預かったルアー全てをこの川に馴染ませる事、
かなり複雑な流れの中で感覚を取戻す事の方が重要。
そうしないと、毎日水量や流速、透明度が変わるこの川で
この時期にモンスター級を釣るのは難しい。
なので「これはあまり底を攻めるとリップが破損するから・・・。」
と言われたSUMING-90CW・フナミノー辺りも、
隠れ大岩、岩盤等が点在する荒瀬の白波に
容赦なく投射して行く。
自分の物ではないので申し訳ないが、
万が一破損してもリップ素材・その他工作具や材料一式持参しているので問題無し。
何もしないで綺麗に返却するよりも、
ボロボロの歯型まみれの方がよかろう。

約100m区間を往復の間にサケではなさそうな鋭い1バイトを出した後、
まだ攻めた事の無い次の地点へ。
気温が少し上がって来た。
この場所は進入経路から川へ出た付近は攻めた事があるので上流側へ探索する。
自分の場合、予備知識が全く無い為か、
いつも他の人達が入る反対側や少々外れた地点に入ってしまう傾向がある。
だからまた遠回りをしてるのかもしれない。
適度に攻めながら途中である事に気付き、
やはりこの一帯は大型魚が潜むエリアだと再確認する。

しかしかなり太陽が照りつけて来て気温が急激に上昇しているのと、
灰色掛かった濁りが強くなって来たので一旦切り上げる。
途中、誰かショートカットしようとして迷子になり右往左往した踏み跡がある。
方角が少しでもずれると帰れなくなる場所もあるので
他人の踏み跡はあてにしない様にしている。

am10:50
車に戻り、 ジャケットの中が汗でビショ濡れなので半袖シャツ1枚になる。
水温計の代わりにと家を出る前に玄関脇から持って来た温度計をブッシュ脇に置くと、
気温29.5℃。
上 流は濁りが強くなってる筈。
下流方面へ。
GAS補給のスタンドで、この地域の最近の天気を聞くと、
昨日は酷い大雨に加えて大粒の雹が降っていたらしく、
上流側で山崩れもあったらしい。
少しおかしな濁り方の原因が分かった。
橋の上から水位を確認すると、減水傾向なのが分かる。

am11:57
水位が急激に上がった時の為に水中の地形を確認しに更に下流ポイントへ。
濁りが追い掛けて来ているが、まだ大丈夫なレベル。
水位 はやや低い。
これ以上減水するとまずい。
下流側へ移動しながら探り、
元の地点近くに戻るとフライマンがやって来たので少し会話しつつ、
お互いに影響しない距離をおいてそれぞれ違うタイプの流れを攻める。
ここに来る途中の上流域は泥濁りだったらしく、
釣りになるのは濁りがやって来る今日の夕方迄かも等と話してると
キャスト後すぐにサケの猛攻が始まる。
「このポイントならこれだ」と選んだMF-70CWが、
オス・メス関係無く猛烈にアタックされる。
通常ならミノーをローリングさせると
ゆったりと口を使って数回バイトしてくる事が多いが、
海に居る時の高活性時の様に、 直線的にガツッと一気に銜えに来る。
ロッドを送ってテンションを抜き、なんとかフッキングせずにやり過ごすが、
数匹どうしても掛かってしまった。
他のルアーに交換、異常なし。
MF-70CWに戻す、サケ来過ぎ・・・。

フライの御方も下流に走られてしまい、
長尺ダブルハンドルがかなり絞り込まれている。
この水位 とサケの活性から本命不在と見て移動する。

pm2:30
更に下流。
この辺りから流れの速度と川の表情が変わり、 水量的には安定している。
が、少し濁りが強い。
水位が上がると高活性の魚が溜まるエリアだが、平穏な雰囲気。
関連する上下の様子を見に行っても要素がまだまだ足りない。
更に下流へ。
ここは行ける筈と見ていたので長い距離を大分丁寧に探るが・・・。
色々と中途半端な状況になっている。
夕暮れが近付いたので本日ここ迄とした。
1日目終了。
(走行58km)

9月24日

少し寝坊してam6:00起床。

am7:00
昨日、納竿後の夕方に偵察したポイントは水位 を考えると違うな、
と思い全く違うタイプのポイントへ。

この辺りは水量 が安定しているのでまずは足場の高い岸から探るが、追尾なし。
静かなポイントなのでそーっと腰まで入水し、
キャストしつつ移動していっても異常なし。
朝日は上がっているものの、
地形と方角の点から水辺にまだ日は差していない。
川面に霧が出ていないので水温と気温の関係が少し気に掛かるが、
雲は少し出ている。

上流からの濁りが少し来ているせいか、全体の雰囲気がボヤンとしている。
1投ごとにルアーチェンジ。
とにかくいろんな種類を角度を変えてキャストし、
目の前 迄戻して来てもピックアップせずに
しばらく泳がせて雰囲気に合う物を探していると、
2〜3のルアーで小魚が反応する。
タイプは違うが共通 している要素がある。
そうかこれか。
流れが緩やかな中・近距離には居ないと踏んで
川の中央から対岸を走る一番強い流れ、
中でも水中で色んな方向から流れがぶつかり合っていそうな箇所に照準を合わせる。
大型ミノーだと少し距離足りず。
遠投重視で重いルアーだと沈降速すぎて上手く行かず。
これはどうかな。
胸の辺り迄水に浸かり、SUMVIBをフルキャスト、
着水後にロッドを高く掲げて水の抵抗からラインを逃がしながら
サミング・ラインリリース・リーリングと小刻みに切り替えて流れに同調させて行く。
モワッと広がる流れを感じた瞬間にロッドを送りつつフワッとしたリーリング、
一瞬後にルアーを真下から頭突きする様な中型らしきバイト。
同じサイズを去年、ここで同時間 帯に1本釣っているが、傾向が全く違う。
フックに触った感触は無かったので再挑戦、
と行きたいが角度・距離共に不利。後で対岸から攻め直した方が良さそうと考えて
上流側へ移動し、重厚かつ急速な流れを攻めて行く
(よく言われる激流という感じか?)。
水中の地形探り用のルアーを1ロスト。
少し上がった更に流れが強いポイントでサムバイブも1ロスト・・・。
共に回収が絶対不可能な状況だったのでやむなく諦める。
(トライしたら体ごと浮き上がった)。

am9:00
場所移動。良くも悪くも無い状況。
気になるのはこのポイントの重要な要素の
岸からせり出した木が切断されて無くなっており、
魚が常時寄り付き難くなって いる。
釣座確保とキャストの為に誰かが切ったっぽいが、
結果的にポイント潰しをしていると思う
(他にも同様になってるポイントがある)。
砂の堆積で昨年よりも底が浅くなっているのと、水位やや足らず。
見切りをつけて、戻る途中でキノコ採取。
ラーメンに入れて昼食。

am11:30
少しタイプの違うコースへ。
ここは自分が初めて納得の行くサイズの魚を釣った地域。
場所によっては透明度が高い所で
浅瀬を猛然と突進してくる迫力のある魚を見れる。
思い入れのある地点の前に、まだ入った事の無かった区間へ。

水辺へ降りる手前の土手状になった高い位 置から見ると、
核心部下流の浅瀬中央に40〜50クラスが定位している。
F90で遠めから様子をみても反応しない。
少し考えて、手前障害物付近で間を取って魚に動いてもらう事にする。
思った通 り、 一度姿を消したと思ったら
水面近くでヒラ打ちさせたF90を下から突き上げた。
水深がかなり浅いのと、ラインテンションが掛けられない、
流れに対して無理な角度 のトレースだったのでフッキングは無理。
もう1匹居そうなので上手の少し淵になってる部分から誘い出してみる。
思った通 り70クラスが少し迷ってる風の泳ぎで出て来る。
太陽光の角度がちょっとまずいので、
後で上流側から攻める事にして移動。

am12:20
魚は着いてるけれど出すのは難しいポイントへ。
ここは以前、斜下からスウッと出て来たかなりの大型が
目の前でリーダーまで一瞬でスポッと一口にしたのにフッキングせず、
口からルアーがスル〜ッと抜けた事もあるポイント。
工事で片側の岸辺が様変わりしていて、出すのはちょっと厳しそう。
プール状になっているので、産卵が終ったサケが少しだけ居る。
水量まずまず。
何度も魚を出しているポイントなので、
出る時は絶対にここ、というコースをトレースするが反応が無い。
こういうポイントの魚は、
自分にとって捕食に適した条件が揃わないとまず喰わない。
何日でもじーっと耐えて、条件が整った途端に急に動き出す。
30cmも潜っていれば姿も見えないので、居てもこちらからはわからない。
地形が変わって定位 する場所が変わったのか?。
遠巻きに対岸へ渡り逆方向から攻めるものの、
岸辺が変わり過ぎていてどうも違う。
やはり最初の立ち位 置へ、と川の中から対岸に戻ろうとすると・・・
「あぁ、やっぱり。」
流れが1/3に絞られているので、慌てても転倒しては余計に危険。
流れにまかせつつ体を2〜3回程回す。
ロッドを岸に投げようとして、借り物のLight Trip G52だっ たのでやっぱりやめる。
流されるスピードを少し落とそうとして岩を片手で掴みながら、
「この下はもう少し攻めたいなぁ・・・。」と思ったので体を水平にして、
いわゆるバタ足に近い姿勢で腕の力でファイト1発的になんとか脱出。
ベルトでかなり浸水対策をしているのでそのままでも問題ないが、
気温が下がってからでは厄介なので、
シャツとパンツ以外を干しながら少し休憩。
近くを走る車から大層不思議そうに見られている。
あー気持ちいい、と思っていると急に風がゴッと吹いて一気に寒くなり、
干してた物が飛んで行った。

休憩後、今度は強い流れが2〜3段続く区間。
魚が常に定位するには厳しい場所なので高活性の個体が入っていない時は出ない。
F90の連射でかなりきわどい攻め方をするものの
案の定、平穏無事な感じ。
自分が魚ならこんな事されたら意地でも喰い付く。
ただし、 居たら、の話し。
キャスト中のラインコントロール途中で突風が吹いて、
対岸からせり出した木に絡む。
ここは流されるとかなりの距離を泳ぐ事になるのと流れの規模も水深も、
渡るのはまず不可能。
日が傾いて来ているので無理は禁物。
少し考えた後、上流に上がって行ってなんとか渡れる地点を探す。
ここは先刻の様に「泳いじゃった」では済まないので
足元と水流の変化を探りながら慎重に渡る。
上陸して枝をかわしながらラインを辿って行き、問題の木へ。
乗れない事はないが、少し枯れかかっているので
登った途端に 折れて木に抱き着いたまま入水100%。
水面からの高さも大分ある。
あまり役に立たないルアー回収器にフックを付けて、
反対側のロープを持ってクルクル回しながら投げて枝に絡ませる。
2〜3度挑戦の後に成功。
枝を思いっきりしならせてF90生還。

日没迄の時間は開けた大きい場所へ。
明日の為に濁りと水量 を見る。
濁り更に強。
サケ・カラフト多数。
西側の空がオレンジと紫色になったので終了。

この夜は生ホタテとホタテ投入ラーメンで
質素なのか豪華なのかよくわからない晩御飯にする。

pm10:00
寝る前に明日の事を考えているとフロントガラスにポツ、ポツと水滴が。
1人ではしゃぐ。
雨の降り方が気になってなかなか寝ようとしない。
濁り上等。
それよりも、一度もっと極端に厳しい状況にならないといけない。
(走行53km)

9月25日

am5:30起床。
弱い雨が降っている。
状況はこの後少しは良くなる筈。
今日、明日で勝負をかけるかどうか思案。
7:00から水量 が増えると有効な地点へ数カ所移動。

途中、ワイパー最速でも雨で前が見えない時も。
水位 と濁度の変化から、自分が最も勝負するべきポイントの様子を見に行く事に。

am10:30
一昨年は川の中を広範囲に歩いて本流筋から良型2本、
昨年はキャストをこらえてタイミングを見計らい、
強逆風の中でモンスター級を1本。
日頃、エアコンの室内機をじーっと見て「もっと大きかったな。」
と言ったり30cm四方の床のパネルを見て
「次は4枚分、いや、みんな5枚分狙ってるし・・・。」
(遺伝子的には少々厳しいが、可能性はある)等、
周りからは「何のコトですか?。」
という質問への回答が、今ここに!!!。
車を停める。ドアを開ける。キッと川を一睨み。
力抜けてこける。
ぼ、ぼくの必殺ポイントがっ・・・。
ポイント消失。
去年、ちょっとイヤな予感はしていたけれどこんなに早くこんな事になるとは。
さてこれから何をするのか、
と視界の中の雲の様子と遠くの天気を360度見渡して熟考する
(見える範囲だけでも空模様はかなり違う)。
あの方角に雲があると言う事は昨日から充分な雨が降り続けていて、
下流に当たる地域は晴れているから
たぶん今頃だとアレがあーなってコレがそーなって
今は正午だからして、直行すれば・・・間に合うかな?。
移動途中で水補給しつつ、
天気を見ながら何をどうすれば良いのか組み立てる。
途中、違う水系を橋の上から見ると通 常は「魚いません」の流れが
「魚けっこういてますよ」になっている。

pm3:00
ポイントに急停止。
まず確認すると、自分が今迄見た中で最高の状態が出来上がっている。
この状況だと、このエリアの最大クラスに近い奴を含めて2〜3匹はいるな、と予想。
さて、ここでは超至近戦もある事と、
社員A殿の期待もあるので迷わずLight Trip G52 を選択する。
肝心の弾薬は・・・。
SABEL SUMが「なぁ、わいを使うてくれや・・ ・」と訴えている。
初めて見た時に「これ何ですか?。」と聞くと
SUM巨匠曰く
「これはヒュ〜〜〜〜ッ、スィ〜〜〜〜〜ッ、
ペラ〜〜〜ン、ペラ〜〜〜〜〜〜〜ン、や!!。
ゼロ戦や。はっはっはぁ〜〜〜!!。」、
出発前にも社員A氏が
「ペラ〜〜ん、ペ らリ〜ん。凄いで!」とニコニコ。
3D運動でありますか。
到着初日のテストでは重厚流れでは上手く動きが出せずに
「ヘラ・・・ん」程度だったのを、
なんとか「ヘラリ〜〜〜ん」に調整、
その後、流れの中で1キャスト中に2 〜3回は
「ベラリン!ペラ〜〜〜ん」が出来る様にしてあった。
1発横ぐわえ、フロントフックバッチリの一瞬勝負なら
通 常の使い慣れた物が待機中である、が・・・。
リスクを恐れて未来なし。
「大丈夫や、わいを使うとオモロイ事になるでぇ〜〜〜 〜・・・」
オモロイ神が勝った。

通常よりも流れの筋が増えているので魚の定位 位置が絞り難い。
ここに1本、そこに1 本、あそこに1本、
いや、去年他の場所であった様に、
2〜3本がダンゴに折り重なって待機中か・・・?。
でもここは流れに対してどうしてもクロス気味しかトレース出来ないので
一瞬勝負になる。
それに流速も通 常よりも速く、魚に有利でこちらに不利。
太陽光の強さと角度、濁度と水面の波立ちからしてこの辺りか・・・?。
鋭く遠め にSABEL SUMクロス発射。
着水時にサミングで少しバウンドさせて「ピシャシャッ」 と飛沫を上げる。
間を全く置かずに即流れに乗せる。
下流方向に行き切る前に、使う流れを選んで水を噛ませ、水中ダイブ。
あ? 思ったよりも潜行浅い。
ホントの水 面。
しまった、この水系とテスト時の水系では水の比重が違うのかも。
一時撤退気味に水面 をスイ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ィィィと流れを使って
航跡を出す様にする。
ピックアップの一瞬後、
水面 がうねったと思った途端に“ぶわーーーーーん”と 大きく揺れて、
手前から向こう側へザバーーーンと消えた。
少し赤みの残ったオス。
80クラスか?。
見切られたのではなく、やはり航跡に反応させてしまった。
しかも今の出方からすると、攻めるにはちょっと厄介な所でスタンバイしている。
案の定、即座にその地点に投入しても、
流れの方向と要調整のせいか、SABEL SUMが 威力発揮出来ない。
魚は絶対に元の位置に戻っている。
作戦変更。
「えええぇぇぇぇぇ!!、わいは、わいは、もうあかんのかぁぁぁぁぁぁぁ?!」
違うの。
後で歯型でボロボロにしてあげるからね。
ちょっと待っとれい。

では、F90装填。
かなり調整・熟成して今が散り時、違う、咲き時の筈。
F90の強みである自重を使って逆ハンドでピンポイント直撃。
直アップの中を鋭く潜行、次の流れとの境で一瞬ヨレる地点でコンマ数秒緊急停止、
ド派手トゥイッチ一閃。
“ズシーーーン、ズ、ズ、ズズズ”
まずい、少し深めで反転喰いさせてしまった。
水中でうねりまくっている。
首振りが始まる前にリフトさせようとすると、
すぐに 水中でピーーーンッとフックが外れた。
完全にテール喰いの浅掛かり。
ロッドにドスンと衝撃が来て
全てが止まったみたいに錯覚する様な喰わせ方をしないといけない。
しかし今の喰い方、待ち伏せしたり追尾して隙を伺う喰い方ではない。
先を争って る時の喰い方。やっぱり複数居る。
ほんの少し間を置いて、今度はポイント核心部の下手をクロス〜ダウンクロスで、
濁度が増している為20cm刻みで手早くチェック。
水の抵抗からここだ、という地点で素早 く大きめのヒラ打ち。
先程とは違う感触のバイト後、
“グィ、グイ、グイ、グ〜〜〜ィ〜〜〜〜グイグイグイグイーーー”と
イヤイヤする様に抵抗を始める。
おそらく60〜70クラス。
少し向こうも困っている様子が落ち着くと、
水流に乗って下流方向へ頭の向 きそのままで後退を始めた。
反転して下流へダッシュされるとまずい。
ヒットの瞬間から水流の影響もあってロッドはバットまで曲 がったまま。
この場所では通常スピニングだと8ft.、ベイトなら6.6ft.を使っていたが、
5.2ft.だと腕を延ばしてロッドの一部と捉えて使わないといけない。
少し自分 正面辺り迄魚を移動させた所で首振りと大暴れが始まった。
5.2ft.の短さを活かして、
新体操のリボン競技のスロー再生の様に
ロッドを魚の動く向きに合わせて2回、3回 と回して行く。
いつも寄せの過程で数回大きく魚を回して円周を縮め切った所で
手前に引いてランディングするが、
Light Trip G52は流れのきつい至近戦だとこの動作がやり易い。
反面、社員A氏が徹底的に使い込んだ状態につき柔軟性が増しているので、
魚の動く方向に合わせてブランクスが追従して行って
上向きに付いているガイドが下向いたり横向いたり。
耐えながらそれを見て、「あぁ、このロッドはあの感覚だな。」と、
小学生の頃に短いヘラ竿を使って25〜40cmのマブナを毎日釣り続けていた記憶が蘇った。
個人的には釣りは棒の片方に糸と針が着いていて、
もう一方を馬鹿が持っているの図式だと思っているので、
過度の剛性やネジレ対策等とは違う視点で組まれているこのロッドは使い易い。
肘を突き出し、急な突っ込みに膝を折って魚と動きを合わせて行く。
アクションも一見ライトタックルなのに、鋭い背筋が通 っている様な不思議な感覚。
ドラグフルロックで強引に魚を抜いてしまうのでは無く、
必要充分な性能はあるけれど、
あとは自分の身体の使い方次第だぞと言われてるかの様。
10kgクラスも出て来る魚相手だとこの細いブランクスでは一般 的には厳しそうだが、
以前社員A氏が「ソリッドカーボンやから、こんなん踏んづけても折れへんで!!ほ れ、ほれ!。」
と言いながらロッドを上から踏んづけてピョンピョン跳んでくれた。
絶対に折ってやろうと思えば折る事も出来るとは思うが、
こういうのはもう少し太めのピュアグラスぐらいだと思っていた自分には
このロッドの感覚は新鮮だった。
かなりの流速なので予想通りバット迄使い切ったけれど、
しかし過度に魚を弱らせる事もなくロッドの短さを活かしてスムースにネットイン。

残念、口角にフロントフック、とは行かず上顎付近のテールフッキング。
今迄はテール喰いでも口角付近に掛けていたが、
F90の動きの多彩 さの影響でフックが暴れ気味なのか、
魚がバイトするタイミングを掴みづらくて後方から執拗にバイトし続けているのか。
動きを殺すのはNGなので、本日終了後にフックを改善する事にしてもう1 本を狙う。
最初の奴はもう無理として、あと1匹居るとするなら・・・あそこだ。
一見「何で そこなの?」という箇所。
低水位でも定位出来て、且つ今の水量だと核 心部迄一気に飛び出して来れるスポット。
扇状に流してコースを決めて、潜行させつつ送り込みつつ移動させつつ
魚が飛び込む間を作って行く。
よし今だ、とバイト誘発の為にスウッとロッドを上流側斜上に動かすと、
何かおかしい、抵抗が全くない。
ロッドの先端とルアーの真ん中ぐらいでラインが切れている。
フックが魚に触れた感触は無かったので
おそらくF90(サスペンド〜シンキング仕様)は流れて行ったか。
切れたラインの端が見つからないものかと
一応ロッドの先端部でその辺りを探ってラインの切れ端を探して見るものの、
この流れの速さでは見つかる訳ない。
本命エリア凱旋の際には活躍をと、じっくり素早く育てて行ったF90。
勿体無いというよりはバルサ製であるとはいえ、
自然の中に無かった物を残してしまう事が気に掛かる。
即座に車に戻ってルアー回収用の長柄磯ダモを持って来て
そこら中を引っ掻き回して探したいのに、
いや、まだこのポイントを潰す訳にはイカンという欲望に負けてしまった。

社員A:「絶対に無くさんといてな〜。」

・・・見事に無くしました。

その壱 完

Author : Tokkun