2015/2/20
二〇一四道釣記その弐
(ロングバージョン)


F90ロストという思わぬ アクシデントに
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頭の中が「?」マークで一杯になる。
誰もいないのに「なんで?なんで?」と声が出る。
魚も警戒気味と感じたので一旦ポイントを切り上げて首を捻りながら車へ。

コーヒーを飲みながら先程のライン切れについて考える。
巻いて間も無いナイロンラインで号数は充分、
そこ迄のサイズの魚では無かったし(水中計測72〜75cm)
リリース後にラインチェックもした。
それよりも変な箇所で切れた事が気になる。
リーリングやトゥイッチで「フッ」と抵抗なく切れるとすれば・・・。
過去にPEライン+スピニングで数回経験した事がある。
トップガイドのリングが脱落してフレームだけになってたり、
一見してすぐに分からないクラックが微かに入っていた時。
亀裂が微細過ぎて2年ぐらい気付かなかった時もある。

天候もすっかり回復したので強めの太陽光にG52のトップガイドをかざすと、
・・・ガッタガタに割れてる。
3〜4分割になっている割れ跡もつい先程という感じでは無い。
ふと、このロッドを受取った時に言われた事を思い出した。
「新品だと気兼ねするやろ〜〜〜。これ、かなり使い込んでるから
遠慮無く思いっきり振り回してくれたらいいよ。」
えーと、使い過ぎです。
こんなになるまで使ってメーカーが聞いたら喜びそう。
いや、この場合は製作者が使用者なのでありまして。

第一版目のロッドと聞いていたので、
今迄かなりの数・サイズの魚を相手にして
徐々にガイドクラックが進行した結果 、
使い手が変わってロッドワークが変わった事と、
この魚特有の反復幅の大きな首振りとローリング、
加えて移動が難しく
こちらから距離が詰められない上に
直ダウンで大きな負荷が掛かったやり取りでガイド破損が進行。
ラインを20m程引き出しても他に傷は無かったので、
おそらくトゥイッチした時に
クラックが広がったリングの鋭角な角に上手い具合に当たり、
ラインが「スッ」と瞬間的に削ぎ落とされたか。
(PEラインであれば、毛羽立ちが多かったり頻繁に切れるのですぐに分かる)
何にしても、魚が掛かった状態でラインが切れなくて良かった。
いや、F-90無くなったから良く無いか。

新品でもすぐにガイド飛びした経験があるのに、
ロッドを受取ってからすぐ車に積んで
未チェックのまま使用したのが良く無かった。
しかし、原因が分かって良かった。
ガイド交換すればいいだけの事だから。

すぐにトップガイドを外して数個と合わせて見るが、
自分のロッドでよく使うサイズばかりで合わない。
スレッド下巻して合わせてもいいけれど、
しっかり補修する時に外し易く、かつ強固に付かないと意味が無い。
そこで念の為に数本纏めて縛っていた予備ロッドを見てみると
ティップ径がほぼ同じ物が1本ある。
加熱してガイドを外してあてがうとジャストサイズ。
リング径は大きいがキャスト時に加速付け易そうなので
硬化の速い2液エポキシにて接着。
硬化待ちの間にもう1杯コーヒーを飲み、これにて補修完了。
硬化不良を懸念して念の為に、
まだ出番が無かった同系統の自分のロッドを使う事にする。

日没迄はまだ時間はあるが、
日が傾いてこのポイントではもう魚が反応しないだろうと思い
残りの時間をF-90に代わるルアーの選択とサーベルサムの微調整に使う。

思った通 りこの辺り一帯の魚は一斉に沈黙。
明るい間に切り上げて別のポイントを下見してから商店へ行きラム肉を購入。
少し手間取ったが今日は1本釣ったのだ。ゆったりするのだ。
という事で入浴へ。
受付に「26日はフロの日(半額)」と書いてある。
そうだ忘れてた。
しまった、明日にすれば良かった。
サスペンド気味に温泉に漂いながら、
「明日も釣ったらまた来るぞ。だから釣るんだぞ。」と誓う。

風呂上がりに炊飯。
しっかり食べて、
今日撮った写真と動画を見てニタニタしながら就寝・・・しない。

フック換装が終って無いルアーがまだある。
今日の感触から、朝夕よりも太陽が上がってからの昼間にスピード勝負と見た。
しかもこのエリア、ポイントは多いがその分移動距離も回数も多い。
よって、釣りの合間に調整やフック交換をする暇は無い。
灯りがある場所へ移動して大型ボックスを降ろし、
預かったルアーを全部広げて片っ端から計測して
とりあえず明日使いそうな物に絞りフック作製。
日付が変わる頃ひとまず終了。
今度こそ寝る。
しかし自分のルアーや今回用に作製した物をあまり使って無い・・・。
(走行104km)

9月26日

am6:30or7:00頃起床。天候晴れ、寝坊した・・・。
入浴して身体も休みたがっていたので仕方が無い。
起きてシートを上げてそのまま即出発、
の前にいつも通 り何か忘れてないか軽く思い返すと、
ひょっとして。
昨晩リングを使わずに直接ルアーのアイにスレッドを通 してフック作製した時、
接着剤の乾燥待ちに引っ掛けて吊るしておいた数本、どうしたっけ?
車外へ出て作業した場所を見に行くと、
フナミノーCWを筆頭に数本が飾り付けをした様にぶら下がってる・・・。
以前、釣り終えてウェーダーを柵に掛けて干したまま大きく移動してしまい、
取りに戻るのに往復300kmという事があって以来、
移動の前には一通 りチェックする様にしている。
気付いて良かった。

改めて出発。
最初は昨日下見を済ませた流域から。
ここは道からもアクセスし易い上に雰囲気も良いので
好きな人は頻繁に通 っていそう。
事実、昨年帰路の途中で出会った人からも
ここで釣れる事が広まった時に人が殺到して
周辺の魚が一気に居なくなった事があると聞いた。
他にも新聞に掲載されたり雑誌に載った途端に広い川幅の両岸が
海のサケ釣場の様な混雑振りになった事もあったとか。

そういえば、
そういう雑誌や記事をファイリングして携行してる人もいたっけな。
屈曲が連続して好ポイントが連続しているが、
改修されて直線化してる区間に挟まれているので距離はあまり長くはない。
ここは3年前、限界サイズに近い超モンスターを釣った人がいる。
が、この流域にそのサイズが居たという事は個体数も少ないと見た。
以前来た時は水量も少なく魚の気配もまるで無かったが、
今の水量が今年平均的に維持されていたとすれば、ひょっとして。
しかし不発。
サイズ問わず、ここは居れば絶対に着いているだろうという箇所で
かなり手を尽しても出ず。
まだ時間が早いのか、遅かったのかもと思い、
昨日ガイドトラブルで切り上げたポイントへ移動。
流れの感じは昨日とさほど違いは無いので、
F-90に代わる物を数種テストした中からLDF-80を選択。
2〜3投目、後方からのバイト。
回り込んでドスンと一気に持って行く感じではないのと、
その後無反応なので後でもう一度来る事にする。
駐車ポイントへ戻りG52の補修箇所を再確認して、
ここ迄使っていた6'6"とロッド交代。
G52の方がピンポイントを目で捉えた瞬間、
無意識にテイクバックしてそのまま速射していた気がする。

やや上流、一度だけ来た事があるエリアへ。
かなり有望な箇所で移動しつつ
ルアーをローテーションしつつ探るものの出ない。
そのまま歩いて下流の方向へ移動。
カーブは無いがせり出した地形の影響で深みと反転流が連続している。
LDF-80をメインに据えて
SUMVIB、秘密バイブ、 子フナミノー、フナミノーCW、
その他等で探って行く。

天気は晴れ。
気温も程良いので
少し高い場所から歩きながキャストしていると散歩気分で楽しい。
「6月頃は動物も植物も豊富で生命感あって、すごくいいですよ。」
と教えてもらった事もあり、一度はその頃に来て実際に自分で見たい。
そんな事を考えて歩きながら蜘蛛が糸を出して空を飛ぶのを見たり、
かなり上空をオジロワシかな?オオワシかな?と見ていたり、
60〜70cmクラスをフックオフしたり・・・。
散歩気分をもう少し、と更に下流側へ。
しかし道は険しくなり川は変化が無くなってきたので戻ることに。

上流側に大きめの移動。
タイプの違う2箇所を攻めるものの、
緩やかなポイントでLDF-80に小型の追いが2回(同じ魚)あったのみ。
更に上流の、急流と大場所が続くポイントは不発。
やはりこの辺りにはこの時期はあまりいない。

移動して午前中に一度反応のあったポイントへ。
太陽角度よーし。水量 よーし。流速よーし。

SABEL SUM準備よーし。

キャストよ〜し。 アクションよ〜し。
下からの突き上げよーしよーし!。

HITよぉぉぉぉーーし!!。

即フックオフよーーーし!!!。

あれ?
フッキングする暇が無い・・・。
又はSABEL SUMのボディ形状と表面仕上げの影響か
バイト後、 魚の歯が立った時に滑っている気がする。
一般的な市販ルアーだと
モンスター級を1匹釣ったら表面 塗装丸剥げになるのも珍しくないが、
完全に横銜えしているのに何の傷も付いていない。
バスやシーバスなら問題ないと思うが、
いや、自分が下手クソなだけだな。
今晩もう少し調整しよう。
めげずに今度はLDF-80を投入。
これも表面 処理がSABEL SUMと似ているので若干の不安がよぎる。
少し離れた場所でダウン気味に移動距離大きめの不規則トゥイッチ5回。
小突く様な連続バイトの後、HIT。
そしてフックオフ・・・。
良く動くルアーなので魚も捕え難いのかもしれない。
でもこの動きだからこそ狙い通 りに出しているのも事実。
今晩の宿題が増えた。
夕方になり終了。

湯が湧き出る場所へ向かう。
おや?あなた
昨日、釣れなかったらここには来ないと誓ったのではないのですか?
いやいや半分釣った様なもんだし半額だし
ちょうどいいじゃないか
それに今日はフロの日と書いてあったではないか
逆らう事は出来ぬ ぞ
今日は面白かったからヨイではないかヨイではないか
湯中からの目線これは魚の習性を考察するに於いては最重要項目であるぞ
それにホレ、もう入っちゃってるもんね屁理屈ですな。
昨日に続けて入浴。

何故か国道脇のスペースで晩御飯。
寝る前に各ルアー調整と予備フック作製。
(走行95km)

9月27日

少し寝坊して6:30起床。快晴。
明るくなってからまずはSABEL SUMで出せそうなポイントへ。
しかし・・・ やはりフックに上手く乗ってくれない。
川が減水気味に移行しているせいか、追い方も少し鈍い。
問答無用にひったくって行くバイト、
又はかなりの大型でないと掛けるのがちょっと厳しい。
勿論SABEL SUMでもフックをトレブル仕様にすれば
口腔内で無くてもどこかに「引っ掛ける」事は出来るのだが、
自分の中で決めているルールがあるのでそれはしない。
これはどうあっても魚を確保する為の釣りではないので、
ある程度の制限の中で工夫をする為に。

トラウト系、
特に北海道全域ではシングルフックが常識だと勝手に思い込んでいたが、
実際に来てみるとそんな事も無かった。
一部を除いては特にレギュレーションがある訳でも無く、
悪い言い方をすれば野放し状態なので皆あくまでも自分なりに。
自分の場合、フックはタイプ・サイズ別 のスレッド巻き
シングルを1つのルアーに1、又は2つ迄。
(初めてこの魚に挑戦した際に2回連続でフックオフしてしまい、
よこしまな頭が働いてトレブルに換装、
次の1投目ですぐに根掛かり・ルアーロストという経験をして以来、
改良はしてもこの仕様は変わっていない。)

ラインは14〜30lb.の中からナイロン・フロロ・PEの3種を使い分け。
(今回はベイトタックルのみ使用なのでナイロン・フロロのみ)

ランディングネットは取込んでから撮影ポイント迄
魚を水中に入れたまま楽に移動出来て、
120cmクラスでも無理なく収まる網目の細かい深底タイプを使用。
その他いろいろ・・・。
吹き流しの様な特殊な長さのネットを使う人もいれば、
小型のフィッシュグリップでのみで魚体を水中固定する人、
フックをベリーアイにしか付けない人、
巨大フックの人、バーブレスの人、
身に付ける装備にこだわった人、 カメラにこだわった人、
釣果にこだわらずお気に入りのポイントを廻って川を楽しむ人、
大きな川、小さな川、 様々たくさん。

そして知らぬ間にSABEL SUMで釣る事に頭に血が昇っていた人。

これは仕方が無い。
譲れませんな。
あのド迫力を見てしまったらタマランですぞ。
心臓バクバク、手はブルブル 頭まっしろ。
マバタキも許されぬ。
あの光景よ、もう一度。

さて、このポイントに2本ある流れの内、
上手の1本が昨日に比べて弱々しくなり、透明度も上がっている。
SABEL SUMは一旦仕舞って
LDF-80・suming等のミノー系、バイト無し。
あまり芳しく無い。
ケースの中を一通 りさらい、少々考えてから秘密バイブを選択。
キャスト、フォール、上方へ軽くトゥイッチ、
更にフォールで 「トンッ!」と鋭く突っ込むバイト。
少しサイズの小さいフックを付けていた為か、
弾かれてしまったのか、フッキングせず。
しかし明らかに先程のアタックとは違う。
これか。
魚が低活性になったのでは無くて、
環境(水位 ・水流)が変わって習性が変化したな。
今迄時間の推移で急に無反応になった時に
疑問に思っていた事が少しだけ分かった。
フックサイズの変更と、ポイントを少し休ませる為に移動。

am10:00。
車に戻ると駐車ポイントにもう1台停まっていて、
しばらくすると上流側から釣人が戻って来た。
全く反応が無かったらしく朝方に大分上流で30cmを1本、との事。
ここと同じくやはり減水傾向らしい。
自分は昨日そこより少し上流では25cm程度、
下がって来ると順にサイズが上がって来た事を言い、
下がった方が良いのかも、等と談義。

使っておられたのが長尺ロッドに仏製スピニングリール
(自分も持っている、よく見かけるサイズよりも大型)、
こちらはG52に古式ベイトリール。
かなりタイプが違う道具なのでお互い釣り方を話していると、
なんだほぼ同じじゃないか。
むしろそちらの方が有利ではないですかな?。
特に自分が「発見したぞ!」と喜んだ攻め方等は
この辺りではみんなやっていそう・・・。
地元の釣人でもそんなに詳しくないですよ、と言われたが、
そんな事は無い筈。
やはり自宅からの距離や経験の長さにはかなわない。

他の大型棲息河川は濁度も下がって落ち着いたらしく、
明日には狙いに行こう。

am11:00。下流の大場所ポイントへ。
思い付きで、通 常攻めるのとは逆の対岸へ。
ここは魚が定位してもおかしくないのに
何故かカスリもしないので不思議に思っていた場所。
SABEL SUMを遠投気味で放射状に探って行くと、
強い流れを横切るのに水中ダイブさせた瞬間、
こちらを向いて大口を開けた魚体が見えた。
距離が合わずにバイト迄には至らず。
違う筋を慎重に攻めるが、
水深もある為かそう簡単には水面 には出て来てくれない。
LDF-80にチェンジ。
先程追尾されたコースをトレース。
立ち位 置近く迄引いて来て
反転流に入ってルアー姿勢が変わった瞬間にスーーーッと近付く魚影。
しかしもうルアーを泳がせられる距離ではないのでやむなくポーズ。
しばらく距離を保つ魚影。
直下で8の字を描いても飛びついてはくれず、
じわりと後ずさって行った。ならば立ち位 置を変え、
秘密バイブをダウン気味に流れの際と岸沿いの反転流の間へキャスト。
水の抵抗を利用して緩やかなフォールの後、2〜3回のトゥイッチ、
・・・トン・  という感触の後、
ラインがスーーーッと横へ動いた。
ドウンッという大きな衝撃で完全に押さえ込んだバイトではないので、
ここでロッドを煽ると抜ける確率の方が高い。
魚が動く方向へロッドを動かし
僅かなテンションだけで様子を見て更に重さを感じる瞬間を待ったが、
フックの先が少し口腔内に立った程度で外れた。
この間約3〜5秒 向こうに違和感を持たせていない筈。
まだ行ける。
少し様子を見るが、時間を空ける事にして移動。

pm13:30。少し上流へ。
このポイントにいつも漂う不穏な雰囲気、
得体の知れない空気感が無い。
なんとも牧歌的な光景。
一応2〜3投キャストする。
時間を浪費するだけのイヤな予感がする。
やめた。

pm14:30。すぐさまもうひとつ上流側ポイントへ。
ここは昨日、動画撮影に凝り過ぎて
フッキングが甘くて抜けた奴がまだ居る筈、
もしくは他にも居るだろうと思っての選択。
しかし・・・減水して底が見える様になってしまっている。
付近4〜5ケ所を探るものの反応全く無し。ダメだ。

pm 15:00。 大きく戻って朝のポイントへ。
全く何の反応も無い。
水位低下、水流も緩やかになって魚が移動してしまった風に思える。

pm15:30。午前中にフッキングしきれなかったポイントへ。
先頭打者はSABEL SUM。
フッキングが難しくても、
太陽光を受けて光る大きな魚が大口を開けて飛び掛かる光景を見たい。
しかし期待に反して出ない。
いや、今日の晴れ具合と少し傾いた太陽の角度、
時期的に鋭い日光の差し方からして
水面 付近であってもSABEL SUMの大きな動作は魚も絶対に確認をしている筈。
ひょっとして隙を伺っているのでは・・・
少し高い足場の真下付近迄寄せて来てから流れの脇で漂わせ、
ゆるやかに控えめにトゥイッチ。
「ドフッ」 鈍くドスの効いた音が、大きく低く響いた。

やはり至近距離にずっと付いて来て、
タイミングを測っていたのだろう。
以前、何度か同様の経験をした事がある。
そのまま同じルアーでやり方を変えて釣った事もあれば、
全く違うルアーで視点を変えて釣った事もある。いずれも少し時間を置いたり、
じっくりと攻めるやり方で上手く行った。
しかし今からではあまりじっくりと攻めている時間が足りない。
経験上、これ以降は魚が反応しにくくなる事、
大人サイズの立派な魚である事、
今写 真を撮れば綺麗な絵が撮れる事、
何よりも現在の場所から戻る時に、
薄暗くなってからでは違う方角に進み易い環境である事。
あまり油断せず、明るい内に終了する事。
時間が限られている。
魚が猛烈に突進してくる様なルアーを探しに、
少ないキャスト数で少しでも違うと感じたら
リーリング中でも即座に空中ピックアップして交換して行く。
ミノー全般 、変化なし。

再びSABEL SUM、出ない。
ひょっとして、ベタ底に張り付いて
加速するタイミングを伺っているのか?。
午前中の事を整理して素早く数種試した後、
秘密バイブで様子を伺う。
出ない。
おかしい。
絶対このラインに定位している筈だ。
岸際の地形、水中の傾斜、流れの向き、太陽光の当たり方、
自分が魚なら今の時間はここに居る。
また少し太陽が傾いた。
少し黄色がかった光に変わる。
環境にもよると思うが、これ以降になると魚が反応して来なくなる。
何よりも自分でストップと決めた時間を越えてしまっては成立しないし、
例え釣れても戻る時に何かある。
自分の考えを1点に集中して、
魚の向きと鼻面 20cmを意識しながら
秘密バイブでしつこく同じラインを細かくトレースする。
リフト&フォール&トゥイッチ・・・
流れに逆らい過ぎず、流されず、引き過ぎず、
落とし過ぎず、横へ通 り越し、そこからまた半分戻し・・・。

微細な違和感を感じた。
ガツガツと噛んだのか?
もう一度ポトン。
トンッ、クーーーッとラインが走る。
が、素早い。
合わせようが無い。
反射的に合わせて掛かり損ねてはそこで終る。
ラインの走った航跡を見ると、
午前中よりも魚の動きが速い。
ルアーを丸ごと銜えて、フックには触りもしていない筈。
もう一度、トンッ。更にもう一度、トンッ。
更に更にもう一度、トンッ。
鋭く硬質な感触が伝わる。
キャストを繰り返し、3〜4回続いた。
ひょっとして2〜3の複数匹が居るのか?
いや、それなら競う様に一撃で横銜えする筈。
反応がフッと消えた。

さすがにもうダメか?。
太陽が先程よりも一層強く光って、
映画の終幕の様に「完」という文字が大きく浮かんでいる様に見える。

しかし身体は無意識にやや遠目を狙ってキャスト。
以前に全く違うタイプのポイント・地域でも
同様の事があった後にモンスター級を掛けた事がある。
そのイメージを元に、今迄よりも押さえたスピードでフォール、
しつこく同じラインをトレースしに掛かる。
今迄よりも一際大きくて鋭い“トンッッ”!!
そしてラインがジグザグに動いた。
突っ込んで来ただけではなく、
身体を大きくうねらせて襲い掛かった時の動きだ。
重みを感じたままテンションを少しずつ掛けて、
フックの座り具合を確実にして行く。
一際大きな重量 感の後、水中で大きな反復動作。
首振りが始まった。
足場が水面から1m近くあるのでウェーディング時よりもテンションが抜け難い。
直後に水面 へ上半身を出して猛烈な首振り。
ここは即座にサミングしながらクラッチを切って
テンション均一のまま水中へ戻す。
スプールを押さえながら2〜3度強めにロッドを煽ってフックセット。
これで外れる事はまずない。

ここで動画を撮影するのを忘れていた事を思い出した。
カメラを取出して録画ボタンを押し、寄せに掛かる。
と、ここで不意に辺りが暗くなった。
正面を見るといつの間にか後方から、
大きく低く垂れ込んだ雲がやって来て太陽を隠そうとしている。
一気に辺りが夕闇の様になった。
モノトーンの薄暗い動画が記録されて行くカメラを停止して
水際から離れた木に引っ掛けておく。
中距離戦なので大暴れされても余裕がある。
ドラグは緩めに設定しているので
巻き上げ時には常にサミングしながら微妙にラインの出し入れをコントロールする。
一連の動作の最中に、昨年出会ったベテラン釣師から
「ベイトリールなら、昔はダイレクト仕様を使う人が多かったんだよ。」
と教えて貰った事を思い出した。

さて、いざランディングとなって右手側の水面 に近い場所と自分との間に
2本のヤナギの木とブッシュがある事に気付いた。
水面 迄約70cm〜1m。
ここから飛び降りて水中からかわすには水深があり過ぎる。
逆方向の左手側は岸際が切り立っていて不可能。
出来るかな?。
少しラインを出してから、
空中でラインがヤナギの木を跨げる様にロッドを垂直、右手上方へ投げる。
グリップエンドをキャッチ。
2〜3箇所にラインが掛かったが、ヤナギの枝は上手くかわせた。
そのまま右側へ走り、少し水に浸かった岸際のブッシュを滑り降りながら
本流筋へ行こうと再度の走りを掛ける魚の動きを阻止して水中で誘導し、
水面 で最後の大暴れをする前に自分からネットに入って貰った。

ネットの深さを利用して魚を水中に置いておき、
途中で放り出したカメラを取りに戻る。
雲はまだどいてくれない。
このまま日が沈む迄薄暗いままだろう。
低く暗い色の雲なので、もう少ししたら雨が降り出しそうだ。
それにしても、数分前迄は気持ち良い晴れ具合だったのに。

水際に戻って魚体を見る。
フックは2本共、下顎前方の内側に刺さっていた。
大抵どちらか一方の事が多いので珍しい。
スケールをあてようとすると大暴れしてなかなか大人しくしてくれない。
水中でおおまかに計測。
80cmと、少しあるかな?。

これぞモンスターというサイズではないが、
発達した下顎や太さ、重さ、鮮明な斑点模様、
加えて銀色が強い体色と頭部の形状、
かなりの健康体で、この界隈では立派な大人の魚だ。

いつもならしつこく眺めて写 真も細かく撮るのだが、
試しに撮ってみるとやはり薄暗いモノトーン調に。
しかたなく確認用にフラッシュを焚いて数枚撮影。
フックはいつの間にか外れていた。
少しサイズが小さく、貫通 していなかったのかもしれない。
違うタイプに交換しよう。

今日は自分が使っていたロッドとG52を併用していて、
ここに来る時にG52を選択したのは大きかったかもしれない。
「このロッドだから釣る事が出来た」 という事では無くて、
なんというか、「面白かった」

魚を掛ける迄の間にあった一連の流れの中で、
短いレングスとソリッドの特性なのか、
ロッドを持っていると言うよりもアンテナを持っている様な感覚で。
勿論チューブラーであっても
その様な感度重視のロッドはいくらでもあるだろうし、
複合素材であっても特性は作れる、が。
先端が細くなっていて曲がる棒に糸を通 す軽いわっかが着いていて、
短い持ち手が付いている。
単純極まりない。
しかし、sumluresのルアー全般 の傾向と同じく
かなりギリギリの所迄バランスを追い込みつつ、
少々ラフに扱ってもブレない物だと感じる。
ここへはかなりの負荷テストをしたロッドしか持って来ないので、
(硬くて強い、という意味では無い)
G52の強度に関しては以前預かった際に大丈夫だと思っていた。
だから掛けてからランディング迄は
バット迄絞り込まれても魚と対等に渡り合う程良さであり、
攻める段階では魚と直接対話してる様な気がした。
自分と魚の間にある道具の存在が希薄になる感覚。
よく細糸を含むライトタックルは面 白いと言われ、
たしかに色んな面で有利であったり、スリル感もある。
しかし同様の感覚と安心感、気軽さを併せ持つとなると・・・
なかなか難しい。

しばらくの間そんな風に考えながら岸辺に寝転がって、
G52と大きなネットの中で自立している魚体を見比べていると、
また薄暗さが増した気がする。
ネットのフレームを水中に入れると様子を伺う迄も無く、
魚は凄い勢いで自分から流れに消えて行った。

帰らないといけない。
太陽と雲の高さが更に下がって秒単位 で暗くなって来た。
高いブッシュが多いので足元の自分が通った形跡だけを見て
川岸近くを飛ぶ様に走って行き、
幹の細い木が乱立して迷路の様になっている地点からは、
そのまま川沿いの最短距離を行くのをやめて少し迂回。
右手側にある斜面 をよじ登り、
ブッシュが腰程度迄の高さで視界も広く取れるコースを行く。
薄暗い時に深い森の中や草木の密集地帯を感覚だけで進むと、
とんでもない方角に逸れてしまうのだ。
ブッシュも大抵は自分の第一印象よりも深い場合が多い。
少し進むと、見慣れた場所に出た。
あとは草地の際を一直線に走る。
普段この界隈に大型獣はまず居ないが
以前、初夏から親子の2頭が居着いてしまった事があるのと、
夕方からは動物の行動時間帯なので邪魔にならない様に気を付ける。

違う地域で、進む方向が分かっていてもブッシュの高さに閉口して
寝転がって休憩している間に寝てしまい、
気が付いた時には 真っ暗になってしまって
より一層戻りづらくなった事もあった。

駐車ポイント付近に戻ると、
雲の下からオレンジ色の太陽が少し覗いて明るさが少し戻った。
この雲、もうすぐ雨が降る。
この後移動する場所では明朝には止んでいて欲しい。
今日は綺麗に決まったな。


to be continued, next time... see you.

しかし、 通常の夕方程度に戻った空模様を見た途端に
そそくさと車を素通 りして川へ駆け降りる。
フッキング迄には至らなかった魚が居た間近のポイントへ急降下。
映画で言う所の本編終了後のスタッフロールなのだ。
まだ席を立っていない魚が居るかもしれない。
しつこいのだ。
もう足痛い。
さすがにもうそろそろ太陽が沈むので
SABEL SUM、LDF-80、秘密バイブを2〜3投づつで勝負。

全くカスリもしない。
誰もおらん。
そうか、このタイミングではやはりダメなんだな、
という事が確認出来たのでこれはこれで良い。
太陽が稜線に掛かり、 今度こそ薄暗くなった川を後にする。
そのまま大きく移動して明日のポイント付近へ。
(走行59km)

その弐 完

Author : Tokkun

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